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コラム |
フーコック島のジュゴンはいま
Phu Quoc島はBai Thom村、Hon Mot山の裾に走る赤土の道の傍の立派な家のなかで、インテリ風の男性がやおら、色褪せた紅い布に包まれた宝物を持ってきた。
それは、彼の海の暮らしの最後の記念品、1トンほどの重さになる海の牛、はたまた人魚とも呼ばれる、ジュゴンの2本の牙だ。彼が最後にジュゴンを殺したのは、もう十数年も前になる。
Nguyen Van Khanhさんはそれが、Phu Quocで捕まえられた、最も大きなジュゴンのひとつだったと言う。
Khanhさんは19歳の頃から、海をよく知る漁師の父について、海を漂った。そこで、水を知り、風を見て、この海の様々な生き物の生態を覚えた。
例えばジュゴンは絶対に、水流を横切ろうとはせず、若い海草が茂る地域を探し、季節で移動する。Hai Tac島に現れる時季もあれば、Phu Quocの海で海藻を探す時季もあり、そしてまた西の遠くに集まる季節もあった。こういった彼らの行動パターンを知り、経験豊かな漁師たちは、太い糸の特殊な網を張った。この網もまた、サメやウミガメ、ジュゴン獲り達が足を洗うのとともに、今はこの海から消えてしまった。
ジュゴン獲り達は通常、海藻豊かな場所で待つ。網にかかるとジュゴンは、力尽き諦めるまで、遠く、遠くに網を引いていく。ただ大人しい動物で、人を襲うことはないため、漁で最も難しい場面と言えば、その巨体をいかにして船に揚げるか、というところだった。軽くてもゆうに100kg、それを漁師の小さな船に載せるのだから、重さで船が引っくり返ることも少なくない。Khanhさんが800kgを超えるジュゴンを捕らえたときは、船に水が溢れ、もう少し風が強ければ、沈んでいたかもしれないという。
そのジュゴンは、皮をはぎ、肉を切り分け、市場で安く売られた。とはいえ、1晩漁に出てジュゴンを捕まえられれば、1カ月は余裕で暮らせる金が手に入った。
一時期はPhu Quoc島の漁師達が次々と船や網を買い求めジュゴン獲りに出かけたが、獲物を捕らえられず、借金を抱える家庭も少なくなかった。そんななかでKhanhさんは安定して捕らえることができ、一晩で5~6頭が網にかかるようなときもあった。父についてKhanhさんは一時期、ジュゴンの“殺し屋”の異名をとったほどだ。仕事を辞めるまでに、200頭以上は捕えたという。
■足を洗う人々
1975年以降、Sau Khauさんは故郷に帰り、海に戻った。親戚の助けを得て船を買い求め、ジュゴン狩りをやめるという人から、使い古しの網を100万ドンほどで買い取った。
船が小さかったため遠くにはほとんど行かず、Phuc Quoc島に近いところで漁をした。1年でジュゴン獲りをするのは、旧暦の10月から12月まで、他の時季にジュゴン達は、他の海域にいた。しかし10頭ほどを捕らえたところでKhauさんは不意に、網も、船も売り、陸に上がる事を決めた。「遅かれ早かれ、きっとその代償を支払うことになると思ったからね」。このことについてKhauさんの妻は、「船は安く、網は廃品として買い取ってもらったくらいよ。でも売るしかなかった。皆が守っている動物を、私達が捕まえるなんてできないじゃない」と話した。
Khauさんばかりでなく、Khanhさんや他のジュゴンの殺し屋達も次々と、足を洗った。そして、島で有名なジュゴン狩り達はまた戻ってきて、この愛らしい動物を守っている。そのなかには、他の漁師達にジュゴンやウミガメを獲らないようお願いして回る、ボランティアをしている人もいる。
(Thanh Nien)
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(2014/04/05 01:24更新) |
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